PAモニター(返し)の使い方・接続方法|AUX・モニター卓・イヤモニまで解説

音響

ライブやイベントでPAをしていると、ほぼ必ず出てくるのが「モニター」、いわゆる「返し」です。

簡単に言えば、客席に聴かせるためのスピーカーとは別に、演者が自分や他の人の演奏を確認するための音ですね。

ただ、このモニター。

「ステージにスピーカーを置いて、ミキサーから音を送ればOK!」

……というほど単純でもないんです。笑

小さなイベントならシンプルな方法で十分なこともありますし、バンドになれば「ボーカルとギターで違う音を返したい」という話も出てきます。さらに規模が大きくなれば、客席用とは別にモニター専用のミキサーを用意することもあります。

今回は、そんなライブ・PAでのモニターの返し方を、大きく4つに分けて紹介します。

ショート動画ではかなり端折った部分もあるので、「結局どういうこと?」と思った方は、このまま読んでみてください。


1.MONITOR OUTからメインと同じ音を返す

まずは一番シンプルな方法です。

イメージとしては、

INPUT → MAIN MIX → メインスピーカー
         ↘ MONITOR OUT → フロアモニター

という感じ。

客席に送っている音を、そのままステージ上のモニタースピーカーにも送ります。

構成がシンプルですし、小規模なPAならこれで十分なケースもあります。

ただ、問題があります。

「客席で欲しい音」と「演者が欲しい音」は、必ずしも同じではないんです。

例えば、ステージ上ですでにギターアンプが結構な音量で鳴っているとします。

客席では生のギターアンプの音が聞こえているので、PAから出すギターは少なめ。

ところがステージ上のボーカリストからすると、

「ギターが聞こえない!」

となることがあります。

そこでモニターのギターだけ上げたい。

……でも、客席と同じミックスを返していたらできません。

客席用のギターを上げれば、当然メインスピーカーから出るギターも大きくなってしまいます。

このあたりから、

「じゃあ客席とモニターで別々のバランスを作ろうよ」

という話になってきます。

「MONITOR OUT」ってステージモニター用なの?

ここはショート動画を見て、

「MONITOR OUTって、そもそもコントロールルーム用じゃないの?」

と思った方もいるかもしれません。

その疑問はもっともです。

実はMONITOR OUTという名前だからといって、必ずステージモニター用とは限りません。

ミキサーによって仕様が違います。

PFL/AFLなど、オペレーターが音を確認するためのモニタリング用途だったり、CONTROL ROOM系の出力として設計されていたりする機種もあります。

なので、

「MONITOR OUTって書いてある!ここにステージモニターをつなげばOK!」

とは一律に判断しない方が良いです。

ここは使用するミキサーの取扱説明書やブロックダイアグラムを見て、そのMONITOR OUTに何の信号が流れているのかを確認してください。

名前より信号経路を見る、ですね。


2.AUXを使ってモニターミックスを作る

ライブPAでは、この方法がかなり中心になってきます。

AUXを使うと、

客席とは別のバランスでモニター用の音を作れます。

イメージはこんな感じです。

INPUT
├→ MAIN MIX → 客席
└→ AUX 1 → モニター

例えば客席では、

入力MAINボーカル用モニター
Vocal
Guitar
Bass
Drums

こんなバランスにできます。

ボーカリストから、

「自分の声をもっとください!」

と言われても、AUX側のボーカルだけ上げればOK。

客席のボーカル音量には影響しません。

これがAUXを使う大きなメリットです。

AUXが複数あれば、人によって違う音を返せる

さらにAUXが複数あれば、

AUX1 → ボーカル
AUX2 → ギター
AUX3 → ベース
AUX4 → ドラム

という感じで、それぞれ違うモニターミックスを作れます。

例えばボーカリストには自分の声を大きめ。

ギタリストにはボーカルとドラムを大きめ。

ドラマーにはベースをしっかり返す。

……みたいなことができます。

ここで一つ、覚えておいてほしいことがあります。

「モニタースピーカーが4台ある=4種類のモニターミックスを作れる」ではありません。

例えばAUX1の信号を分配して4台のモニタースピーカーに送れば、スピーカーは4台ありますが、基本的には全部同じミックスです。

4人それぞれ別のバランスにしたければ、基本的にはそれだけの独立したAUXが必要になります。

文化祭や学校イベントなどで、

「モニター4台お願いします!」

という話になったときも、実は台数だけでは仕様が決まらないんですね。

誰に、何を、どれくらい返したいのか。

ここまで考えて初めてモニターの構成が決まります。

PRE FADERとPOST FADER、どっち?

AUXを使おうとすると、今度は、

PRE / POST

という言葉が出てきます。

また難しそうな単語が出てきた……と思うかもしれませんが、考え方はそれほど難しくありません。

ステージモニターでは、基本的にPRE FADERを使います。

なぜかというと、客席のフェーダー操作にモニターを連動させたくないからです。

例えば本番中、

「客席ではボーカルが少し大きいな」

と思って、FOHのボーカルフェーダーを下げたとします。

その瞬間、ステージ上のボーカリストのモニターまで小さくなったら困りますよね。

逆も同じです。

客席側の都合でフェーダーを上げたら、突然モニターから自分の声が大きく返ってくる。

演者からすると、

「いやいや、こっちはちょうど良かったんだけど!」

となります。笑

PRE FADERなら、基本的にメインフェーダーを動かしてもAUX側の音量は影響を受けません。

なので、客席とステージを別々に調整できるわけです。


3.モニター専用ミキサーを用意する

さらに規模が大きくなると、ミキサーそのものを分ける方法があります。

つまり、

客席用のミキサー
モニター用のミキサー

を別々に用意します。

イメージとしては、

マイク

SPLIT
├→ FOH卓 → 客席
└→ MONITOR卓 → 演者

という構成です。

FOHのオペレーターは客席の音を作る。

モニター側のオペレーター、いわゆるモニターマンは演者の音を作る。

役割を完全に分けるわけですね。

出演者が多かったり、モニターミックスの数が多かったりすると、FOHオペレーターが客席を聞きながらステージ上のモニターまで全部管理するのはなかなか大変です。

そんなときにモニター卓を分けると、それぞれが自分の仕事に集中できます。

モニター卓を「もう一つのミキサー」として考える

これは少し別の視点なんですが、個人的にはトラブル時の復旧手段という意味でも、ミキサーがもう1台あることには価値があると思っています。

例えば福山DTM Worksでは、

FOH:YAMAHA TF3
MONITOR:YAMAHA DM3

というように、役割の違うミキサーを2台使う構成を取ることがあります。

もちろん、

「モニター卓がある=完全なバックアップ」

ではありません。

ここは誤解してほしくないところです。

本当に完全な冗長化をするのであれば、デジタルミキサーも含めてシステム全体を二重化するのが理想だと思います。

ただ……現実のイベントには予算があります。

何でもかんでも2台ずつ用意できれば安心ですが、その分だけ機材費も上がります。

そこで、

  • 入力信号を適切に分岐しておく
  • モニター卓がFOHとは独立して動けるようにしておく
  • トラブルが起きた場合の切り替え方法を考えておく

といった設計をしておけば、もう1台ミキサーが存在すること自体が、トラブル時の復旧手段になる場合があります。

あくまで「完全なバックアップ」ではありません。

でも、

限られた予算の中で、どこまでリスクに備えるか。

こういうところも、PAの機材構成を考えるうえでは大事なんじゃないかなと思います。


4.イヤモニ(IEM)を使う

ここまではステージ上にフロアモニターを置く方法でしたが、そもそもスピーカーから返さない方法もあります。

それがイヤーモニター、いわゆるイヤモニ(IEM)です。

演者がイヤホンを装着して、そこへモニターミックスを送ります。

イヤモニのメリットとしては、

  • 演者ごとにモニターミックスを作れる
  • ステージ上で大音量のモニタースピーカーを鳴らさなくていい
  • 演者が移動してもモニター環境を維持しやすい

といったところがあります。

特に、フロアモニターから大きな音を出さなくていいのは大きいですね。

後でも触れますが、モニタースピーカーの音って、ステージ上だけで綺麗に消えてくれるわけではありません。

当然、客席にも回り込みます。

そういう意味でもIEMにはメリットがあります。

ただし、

「じゃあ全部イヤモニにすればいいじゃん!」

という話でもありません。

ワイヤレスで運用するならワイヤレスシステムが必要ですし、電波の周波数管理も必要になります。

さらに、

  • 必要なモニターミックス数
  • アンビエンス
  • 安全な音量管理

など、フロアモニターとはまた違った課題が出てきます。

なので、イヤモニがフロアモニターの完全上位互換……というより、別のモニター方法の一つとして考えた方が良いと思います。


イヤモニはさらに「イマーシブ」という世界もある

ここからはちょっと発展編です。

通常のIEMでも左右の定位を使って、

「ギターは少し右」

「キーボードは少し左」

といった配置ができます。

さらに進んだものとして、イマーシブIEMという考え方もあります。

単純な左右だけではなく、音像の配置や空間そのものを使ってモニター環境を作っていくイメージですね。

例えばeMotion LV1のようなシステムを使った、より高度なIEM環境もあります。

ここまで来ると、今回の記事で全部説明するとイヤモニだけで一本の記事ができそうなので(笑)、今回は、

「モニター技術はここまで進んでいる」

くらいに知っておいてもらえれば十分だと思います。


結局、どの返し方を選べばいい?

ここまで4つ紹介しましたが、

「じゃあ結局どれが正解なの?」

という話ですよね。

ざっくり考えるなら、こんな感じです。

現場モニターの考え方
弾き語り・小規模PAシンプルな返しでも対応可能
小〜中規模バンドAUX
複数人・複数モニター複数AUX
大規模ライブモニター卓
IEM運用AUX+IEM
高度なIEM環境イマーシブも選択肢

ただ、これはあくまで目安です。

高価な方法ほど正解、というわけではありません。

弾き語り1人の小さなイベントに、モニター専用卓を持ち込んでも大袈裟ですよね。

逆に出演者が何人もいるのに、全員に同じモニターミックスを返したら演奏しづらくなるかもしれません。

結局は、

必要なモニターミックス数、演者数、会場、そして予算。

このあたりを見ながら決めることになります。


【実体験】モニターを下げたら、客席の音が一気にまとまった

ここからは、実際にPAをしていて経験した話です。

以前、小さめの会場でPAをしていたときのこと。

メインスピーカーのミックスをいくら触っても、

なんか音がまとまらない。

EQを触ったり、バランスを変えたりしても、どうもしっくり来ないんです。

そこで試しにステージ上のモニターを下げてみました。

すると、

客席の音が一気にまとまった。

「あ、原因こっちか」と。笑

要するに、ステージモニターから出ている音がステージ上だけではなく、客席側にもかなり聞こえていたんですね。

ところが今度は演者から、

「モニターをもう少し上げてください」

と言われます。

まあ、そうなりますよね。笑

客席としては下げたい。

演者としては上げたい。

この経験は、モニターを考えるうえですごく分かりやすい例だと思っています。

フロアモニターの音は客席にも届く

モニタースピーカーは演者の方向に向けています。

でも、音がそこでピタッと止まるわけではありません。

イメージとしては、

フロアモニター → 演者
       ↘ ステージ後方
        ↘ 反射
         → 客席

という感じで、直接音だったり反射音だったり、いろんな形で客席側にも届きます。

特にステージと客席の距離が近い会場では、この影響を無視できないことがあります。

PAオペレーターがFOHで、

「よし、このバランス!」

と思っていても、最前列では全然違うバランスで聞こえている可能性があるんですね。

お客さんが入ると、また状況が変わる

さらに面白いのが、空席のリハーサルと本番でも状況が変わることです。

先ほどの現場でも、空席の状態ではモニターの影響をかなり感じました。

ところが本番でお客さんが入ると、中ほどではその影響がかなり減りました。

人が音を吸ってくれるからですね。

ただ、だからといって、

「じゃあ本番では問題ないね!」

とも言い切れません。

特に最前列。

ステージに近い場所では、メインスピーカーだけではなく、ステージ上の生音やモニターからの直接音もかなり受けている可能性があります。

なので個人的には、FOHの位置だけで聞いて判断しないことも大事だと思っています。

可能なら客席を歩いてみる。

最前列でも聞いてみる。

空席と本番でどう変わるかも意識してみる。

こういう地味な確認が、意外と効いてきます。


モニターは「演者だけの音」ではない

モニターというと、

「演者が聞くためのスピーカー」

という説明になりがちです。

もちろん、それ自体は間違っていません。

でも実際のPAでは、もう少し広く考えた方が良いと思っています。

モニターを大きくすれば、演者は演奏しやすくなるかもしれません。

一方で、その音が客席に回り込んで、客席側のミックスに影響することもあります。

逆に客席音だけを優先してモニターを下げすぎれば、今度は演者が演奏しづらくなります。

つまりPAでは、

演者が演奏しやすいこと

と、

客席で良いバランスになること

この両方を成立させる必要があります。

だからモニターを考えるときは、

「モニタースピーカーを何台置く?」

だけではなく、

「誰に、何を、どれくらい返す?」

まで考えてみてください。

そして、できればもう一つ。

「その返した音が客席ではどう聞こえる?」

ここまで考えられると、モニターの見方がかなり変わってくるんじゃないかなと思います。


ライブ・文化祭などのモニター環境も含めてPAを設計します

福山DTM Worksでは、文化祭やライブイベントなどの音響について、メインスピーカーだけではなく、演目や出演人数に合わせてモニター環境も含めたPAシステムを設計しています。

「モニターが何台必要か分からない」

「バンドが何組も出演するけど、どう組めばいい?」

といった段階でも大丈夫です。

演目や会場、出演人数、予算を見ながら一緒に考えていきます。

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