ATEM Miniシリーズへの買い替えを考え、所有しているRoland VR-1HDのリセール価格を調べていたところ、思わず手が止まりました。
「VR-1HD、中古だとこんなに安いのか……」
記事執筆時点で確認できた価格は、次のとおりです。
| 機種 | 新品価格の目安 | 中古価格の一例 | 新品比 |
|---|---|---|---|
| Roland VR-1HD | 151,800円 | 39,800円 | 約26% |
| ATEM Mini Pro | 53,980円 | 33,000円 | 約61% |
※価格は記事執筆時点の一例です。新品・中古ともに販売店や商品の状態によって変動します。
ATEM Mini Proの中古価格と数千円しか変わらない一方、VR-1HDは新品価格15万円クラスのAVミキサーです。
もちろん、中古価格が安いのには理由があります。しかし、用途さえ合えば、VR-1HDの中古はかなりコストパフォーマンスの高い選択肢です。
私自身、VR-1HDを会議やハイブリッド配信で使用してきました。その経験から結論を先にお伝えすると、次のような構成なら今でも十分におすすめできます。
- カメラ2台+PowerPoint用PC
- スイッチャーの近くにカメラを設置できる
- 映像と音声をワンオペで管理したい
- 病院や学校など、自由にソフトを入れられないPCを使用する
- XLR接続のワイヤレスマイクやコンデンサーマイクを使いたい
一方、4台以上のカメラを使いたい人や、マルチビューを見ながら本格的にスイッチングしたい人には、ATEM Mini Proの方が向いています。
この記事では、VR-1HDの中古価格が安い理由と、実際に使って分かった長所・注意点を詳しく紹介します。
Roland VR-1HDとは

Roland VR-1HDは、3系統のHDMI入力、2系統のXLRマイク入力、USBによる映像・音声出力を一台にまとめたAVストリーミングミキサーです。
一般的なビデオスイッチャーが映像機能を中心に設計されているのに対し、VR-1HDは音声ミキサーとしての機能も充実しています。
カメラ映像を切り替えるだけでなく、マイクやPCの音声をミックスして、そのままZoomやYouTube配信へ送れるのが特徴です。
Roland公式サイトでは、現在もシステムプログラムやコントロールソフト、取扱説明書が公開されています。Roland VR-1HD公式製品情報
VR-1HDの中古がおすすめできる理由
1.修理やメーカーサポートを相談できる
安価な配信機材の中には、故障すると修理費の方が高くなり、実質的に買い替えるしかない製品もあります。
その点、Rolandは国内に修理受付の仕組みがあり、故障時に販売店やメーカーへ相談できます。
中古品は新品保証の対象外となる場合がありますが、修理の相談先が存在すること自体は業務で使ううえで大きな安心材料です。
ただし、修理可能かどうかは故障内容や補修部品の在庫によって異なります。中古だから必ず安く直せるとは限らない点には注意してください。Roland修理サービス
2.XLR入力を備えたオーディオインターフェイスを内蔵
VR-1HDには2系統のXLRマイク入力があります。
そのため、ワイヤレスマイクの受信機やコンデンサーマイクを本体へ直接接続できます。ファンタム電源にも対応しており、小規模な配信なら別途オーディオインターフェイスを用意する必要がありません。
ATEM Mini Proのアナログ音声入力は3.5mmステレオミニ端子です。XLR機器をつなぐ場合は、ミキサーや変換機器を別途用意することになります。
映像だけでなく音声も一台にまとめたい人にとって、VR-1HDは非常に扱いやすい機種です。
3.エコーキャンセリング機能を搭載
VR-1HDには、ハイブリッド会議で役立つエコーキャンセリング機能も搭載されています。

会場スピーカーから流れたオンライン参加者の声が、会場マイクを通して再びZoomへ戻ると、相手側には自分の声が遅れて聞こえます。
エコーキャンセリングは、この音声の回り込みを抑えるための機能です。
専用の会議用DSPほど自由なルーティングはできませんが、小規模な会議やオンライン対談では便利です。
ただし、VR-1HDの音声機能には実際に使って初めて気づく注意点もあります。こちらは後半で詳しく紹介します。
なぜVR-1HDの中古価格は安いのか
中古価格だけを見ると、「人気がないのでは?」「何か致命的な欠点があるのでは?」と思うかもしれません。
正直に言えば、ATEM Miniシリーズほど中古市場で人気が高くないのは事実だと思います。ただし、単純に性能が低いから安いわけではありません。
1.発売当初と現在で新品価格に差がある
VR-1HDは発売当初、10万円前後で販売されていました。その後の物価上昇などによって新品価格が上がり、現在は15万円前後で販売されている店舗もあります。
現在の新品価格と39,800円の中古価格を比べると約4分の1ですが、発売当時の実売価格を基準にすると約3分の1です。
それでも十分に安いものの、現在の新品価格だけを基準にすると、値下がり幅がより大きく見える点は考慮しておきたいところです。
2.HDMI入力が3系統しかない
VR-1HDのHDMI入力は3系統です。
ATEM Mini ProやRoland V-1HDシリーズが4系統のHDMI入力を備えていることを考えると、少なく感じる人もいるでしょう。
例えば、次の構成で3入力をすべて使い切ります。
- HDMI 1:引きカメラ
- HDMI 2:寄りカメラ
- HDMI 3:PowerPoint用PC
この状態から予備PCや追加カメラを接続することはできません。
カメラを3台以上使用する人には大きな制限ですが、「カメラ2台+資料用PC」と割り切れば、過不足のない入力数でもあります。
3.マルチビューに対応していない
個人的に感じるVR-1HD最大の弱点は、マルチビュー非対応であることです。

マルチビューとは、接続したカメラやPCの映像を一つのモニターへ分割表示する機能です。
V-1HD+なら、カメラ映像、PowerPoint、プログラム映像、配信状態などを一台のモニターで確認できます。
一方、VR-1HDではスイッチング前の3映像を一覧表示できません。
カメラが何を映しているか確認できないまま切り替えると、カメラマンが構図を調整している途中の映像を本番へ出してしまう可能性があります。
複数のカメラマンと連携する現場や、スイッチャーからカメラが離れている現場では、避けられやすいポイントです。
VR-1HDを最大限活用できる構成
マルチビュー非対応は確かに大きな弱点です。
しかし、実際に使っていく中で「この構成ならマルチビューがなくても問題ない」と感じたシチュエーションがありました。
それが、カメラ2台+PowerPoint用PCをワンオペで操作する構成です。
カメラはスイッチャーの近くへ置く

2台のカメラをスイッチャーの近くに配置し、それぞれの液晶モニターを目視できるようにします。
これならマルチビューがなくても、カメラ本体の液晶で構図やフォーカスを確認できます。
私の場合は、次のように役割を分けています。
- カメラ1:登壇者を撮影する寄り映像
- カメラ2:会場全体を撮影する引き映像
- HDMI 3:PowerPointや資料映像
引きカメラは基本的に固定しておき、寄りカメラだけを必要に応じて調整します。ワンオペでも確認する映像が限定されるため、操作が複雑になりません。
HDMI 3のTHRU出力でPowerPointを確認する
VR-1HDのHDMI入力3には、入力信号をそのまま出力できるTHRU端子があります。
ここへサブディスプレイを接続すれば、PowerPoint用PCの映像を常時確認できます。
結果として、映像確認は次のように分散されます。
- カメラ1:カメラ本体の液晶
- カメラ2:カメラ本体の液晶
- PowerPoint:THRU出力先のサブディスプレイ
- 本番映像:PROGRAM出力
- 設定画面:PREVIEW出力
一つの画面にまとまったマルチビューほどスマートではありませんが、ワンオペ配信では意外と実用的です。
実際に困ったVR-1HDの音声ルーティング
VR-1HDは映像機器としては音声機能が充実しています。
しかし、PAミキサーや会議室の音響設備と組み合わせると、ルーティングに少し癖があります。
これは仕様表だけでは分かりにくく、実際のハイブリッド配信で私も悩んだ部分です。
HDMI出力にはMAINミックスの音声が送られる
VR-1HDのHDMI出力には、基本的にMAINミックスの音声がエンベデッドされます。
通常の配信では便利ですが、会議室の映像設備側でHDMI音声が取り出され、会場スピーカーへ送られる構成では注意が必要です。
例えば、会場のワイヤレスマイクが次の2経路からスピーカーへ送られるとします。
- 会場ミキサーから直接スピーカーへ送る
- VR-1HDのMAINミックスからHDMI経由でスピーカーへ戻る
この場合、同じマイク音声が時間差を伴って二重に聞こえることがあります。
配信単体で使うときには問題になりませんが、既設音響と組み合わせるハイブリッド配信では、事前に音声経路を確認しておく必要があります。
マイク入力はダイレクトモニターに近い設計

VR-1HDのマイク入力へ入れた音声は、通常MAINミックスへ送られます。
一般的なオーディオインターフェイスにあるような、「配信先には送るが、メイン出力ではモニターしない」という単純なダイレクトモニターOFFスイッチはありません。
そのため、会場ミキサーですでに拡声しているワイヤレスマイクをVR-1HDにも入力すると、接続方法によっては二重音声やループの原因になります。
私も現場でHDMIにエンベデッドされた音声が既設設備へ戻り、意図しない経路で音が回り込む問題を経験しました。
音が出たから接続完了ではなく、「どの音が、どの出力から、どこへ戻っているか」まで確認する必要があります。
AUXバスを使えば回避できる場合がある
幸い、VR-1HDにはAUXバスがあります。
PCから返ってきたオンライン参加者の音声(USB FROM PC)など、会場スピーカーへ送りたい音だけをAUXへ送り、LINE OUTの出力バスをAUXに設定できます。



- MAIN:配信先へ送る完成音声
- LINE OUT:会場スピーカーへ返すオンライン参加者の音声
- 会場マイク:会場ミキサーから直接拡声
この構成なら、会場マイクを再び会場スピーカーへ戻さず、オンライン参加者の音声だけを返しやすくなります。
ただし、HDMI経由の音声まで既設設備側で再生される場合は、VR-1HD側だけでは解決できないことがあります。会場設備側でHDMI音声をミュートする、音声を別経路にするなどの対策が必要です。
VR-1HDとATEM Mini Proの違い
どちらが上位というより、設計思想がかなり異なります。
| 比較項目 | Roland VR-1HD | ATEM Mini Pro |
|---|---|---|
| HDMI入力 | 3系統 | 4系統 |
| マルチビュー | 非対応 | 対応 |
| XLRマイク入力 | 2系統 | なし |
| アナログ音声入力 | XLR、RCAなど | 3.5mmステレオミニ |
| 映像用HDMI出力 | PROGRAM+PREVIEW | 1系統 |
| USB端子 | USB 3.0 Type-B | USB Type-C |
| 本体のみの設定 | 比較的充実 | 詳細設定はソフト中心 |
| PCへの映像出力 | USB Webカメラ出力 | USB Webカメラ出力 |
| 本体からの直接配信 | 非対応 | 対応 |
| USBストレージ録画 | 非対応 | 対応 |
VR-1HDの長所
本体だけで設定を進めやすい
VR-1HDはPREVIEW出力にメニューを表示し、本体のボタンやつまみを使って映像・音声設定を変更できます。
専用ソフトのVR-1HD RCSも用意されていますが、基本的な設定のために必ずPCへソフトをインストールする必要はありません。
病院、学校、企業など、管理者権限がなく自由にソフトを追加できないPCを使う現場では、この違いが意外と大きいです。
XLR入力とLINE出力がある
ワイヤレスマイクやコンデンサーマイクを直接つなげるうえ、LINE OUTも備えています。
AUXバスを使った個別ミックスにも対応しており、小規模な配信ならVR-1HD一台で映像と音声をまとめられます。
PROGRAMとPREVIEWを同時に出力できる
VR-1HDにはPROGRAM用とPREVIEW用のHDMI出力があります。
ATEM Mini ProのHDMI出力は1系統なので、PROGRAM、マルチビュー、各入力映像などから表示内容を選択します。
VR-1HDは本番映像をプロジェクターやレコーダーへ出しながら、別のモニターへ設定画面を表示できます。
ATEM Mini Proの長所
HDMI入力が4系統あり、マルチビューに対応
ATEM Mini Proは4系統のHDMI入力を備え、マルチビューで各入力をまとめて確認できます。
離れた位置にカメラを置く場合や、複数人で運用する場合は、ATEM Mini Proの方が安心してスイッチングできます。
映像設定の自由度が高い
ATEM Software Controlを使えば、ピクチャーインピクチャー、クロマキー、トランジション、静止画、マクロなどを細かく設定できます。
単純なカメラ切り替えだけでなく、配信画面の演出まで作り込みたい人にはATEM Mini Proが向いています。
Fairlight Live対応
ソフトウェア型ミキサー「Fairlight Live」に対応しており、ATEM Miniの音声をソフトウェア型ミキサーに立ち上げることができます。
ただし、ATEM Mini ProにはXLR入力や独立したアナログ音声出力がありません。会場音響との接続まで考えると、外部ミキサーやオーディオインターフェイスが必要になる場合があります。
USB Type-Cを採用
VR-1HDのUSB端子はUSB 3.0 Type-Bです。
プリンター用のUSB Type-Bと似ていますが、USB 3.0 Type-Bは端子形状が異なります。一般的なUSB Type-Bケーブルでは映像を出力できません。
USB 3.0 Type-BからUSB Type-Cへ接続できるケーブルもありますが、ケーブルや変換アダプターとの相性によっては認識しない場合があります。
ATEM Mini Proは現在一般的なUSB Type-Cを採用しているため、ケーブルを用意しやすい点では有利です。
中古VR-1HDを購入するときのチェックポイント
VR-1HDをメルカリなどで購入する場合は、価格だけでなく次の項目も確認しましょう。
ACアダプターが付属しているか
純正ACアダプターと電源コードの有無を確認します。
業務用機材は本体のみで出品されていることもあります。別途ACアダプターを購入すると、せっかくの割安感が小さくなってしまいます。
HDMI入力・出力がすべて動作するか
「通電確認済み」だけでは不十分です。
最低でも次の動作状況を確認したいところです。
- HDMI 1~3の映像入力
- PROGRAM出力
- PREVIEW出力
- HDMI 3 THRU出力
- USB映像・音声出力
- XLRマイク入力
- LINE OUT
- 各ボタンとつまみ
出品者がすべて確認できない場合は、未確認部分があることを前提に価格を判断しましょう。
USB 3.0 Type-Bケーブルの有無
VR-1HDをWebカメラとしてPCへ接続するには、USB 3.0に対応したケーブルが必要です。
中古品にケーブルが付属していない場合は、PC側の端子に合わせて別途用意します。
購入前に、自分のPCがUSB Type-AなのかType-Cなのかも確認しておきましょう。
ボタンやフェーダーの状態
長期間使われた機材では、ボタンの反応やフェーダーの接触に問題が出ることがあります。
可能であれば、次の点を出品者へ質問しておくと安心です。
- ボタンの反応が悪い箇所はないか
- フェーダー操作時に音が途切れないか
- 長時間使用しても映像が止まらないか
- USB接続が安定しているか
- ファンタム電源が正常に使えるか
結局、VR-1HDとATEM Mini Proはどちらを買うべき?
VR-1HDがおすすめの人
- カメラ2台+PowerPointで配信したい
- XLRマイクを直接接続したい
- 映像と音声を一台でまとめたい
- PROGRAMとPREVIEWを同時に出力したい
- PCへ専用ソフトを入れずに設定したい
- 中古で高機能なAVミキサーを安く購入したい
ATEM Mini Proがおすすめの人
- HDMI入力を4系統使いたい
- マルチビューで全入力を確認したい
- YouTubeなどへ本体から直接配信したい
- USBストレージへ録画したい
- 映像演出や音声処理を細かく設定したい
- USB Type-Cで手軽に接続したい
まとめ:カメラ2台のワンオペ配信なら中古VR-1HDは買い
VR-1HDには、HDMI入力が3系統、マルチビュー非対応、USB端子がUSB 3.0 Type-Bという明確な弱点があります。
音声ルーティングにも癖があり、既設の会場音響と組み合わせる場合は、MAINとAUX、HDMIエンベデッド音声の流れを理解しておく必要があります。
それでも、4万円前後の中古価格で次の機能が手に入るのは魅力的です。
- 3系統のHDMI入力
- 2系統のXLRマイク入力
- ファンタム電源
- USB映像・音声出力
- PROGRAM/PREVIEWの独立出力
- AUXバス
- エコーキャンセリング
- 本体だけで進められる各種設定
特に、カメラ2台をスイッチャーの近くへ配置し、PowerPoint用PCを加えたワンオペ配信なら、マルチビューがなくても十分に運用できます。
ATEM Mini Proの方が向いている現場もありますが、「ATEM Miniの中古を探していたら、ほぼ同じ予算でVR-1HDが見つかった」という人は、一度用途を照らし合わせてみる価値があります。
弱点を理解して使えば、中古のVR-1HDは今でも非常にコストパフォーマンスの高い配信スイッチャーです。


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