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Fairlight LiveはライブPAで使えるのか?16ch負荷テストで検証してみた

音響
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最近のDSPサーバーを見ていると、DSP処理が前提だった時代から、CPUネイティブ処理へ少しずつ移行している流れを感じます。たとえばWAVES SuperRack LiveBoxのように、CPUネイティブでライブプラグイン運用できるシステムも登場しています。

DSPベースからCPUベースのエフェクトボックスへ移行する流れも

そういう流れを見ていると、「最近のMacならDSPなしでもかなり実用になるのでは?」という期待が出てくるわけで、そこを確かめたくて今回の検証をやってみました。

題材はBlackmagic Designのソフトウェアミキサー「Fairlight Live」。配信向けのイメージが強いですが、ライブPA用途でどこまで使えるのかを、実戦に近い構成で試しています。

  • 16ch構成
  • VST大量投入
  • 低レイテンシー設定
  • モニターAUX運用

結論から言うと、2021年モデルのM1 Pro MacBook Pro環境でも、低バッファ+高負荷VSTではまだ厳しい場面がありました。ただ、方向性そのものはかなり面白い。その話を順番に書いていきます。


検証環境

  • MacBook Air(DVS)― マルチトラック再生用(仮想ステージボックス)
  • ネットワークスイッチ ― BS-GS2008P
  • Focusrite Red 4Pre ― Dante入力 + Thunderbolt接続
  • MacBook Pro 16インチ(2021 / M1 Pro)― Fairlight Live実行環境

MacBook AirからDante Virtual Soundcard経由で16chを送り出して、実際のライブステージを想定した構成にしています。


Fairlight LiveのいちばんのポイントはVSTが使えること

これに尽きます。モデリング系コンプ、リバーブ、ノイズリダクションなど、DAWで使っているプラグインをそのままライブに持ち込めるのは、従来のデジタルミキサーにはなかった強みです。

個人的にいちばん気になっていたのが「リアルタイムのノイズリダクションって実際に使い物になるのか」という点だったので、そこを中心に確認していきました。


まずVSTなし状態で確認

16モノラルトラック+AUX SEND構成を組んで、まず素の状態でCPU負荷を見てみました。

  • CPU使用率:約6%
  • バッファサイズ:128
  • レイテンシー:約2.7ms

かなり余裕があります。バッファサイズ32まで下げても音切れはほぼ出ませんでした。標準機能だけで動かす分には、相当軽いという印象です。


全チャンネルにWaves EQを入れてみる

次に、全16chにWaves F6-RTA Monoをインサート。

このとき便利だったのが、チャンネル設定のコピー&ペーストです。EQ設定やAUX SENDをまとめて複製できるので、16ch分を手作業でセットアップする手間がかなり省けました。

ただ、ここから少し様子が変わってきます。

バッファサイズ32は厳しかった

全16chにVST EQを入れた状態でバッファサイズを32に下げると、音切れ・ドロップアウト・再生停止が発生しました。

面白かったのがCPU使用率の挙動です。常時高負荷というわけではなく、通常時は約15%前後で推移しているのに、一瞬だけ「Cores Used 6 of 6 / 59%」まで急上昇する場面がありました。その瞬間にドロップアウトが起きている感じです。

オーディオ処理はバッファサイズが小さいほど、与えられた時間内に全ての演算を終わらせなければならない制約が厳しくなります。バッファ32のような低レイテンシー設定では、処理が重なった瞬間に負荷が跳ね上がり、締め切りに間に合わなくなる。CPU使用率の平均値には余裕があるのに落ちる、というのはこういう仕組みです。

今回はまさにその典型例で、ライブ用途では「平均CPU使用率」より「瞬間的な負荷スパイクにどこまで耐えられるか」を意識したほうがよいと感じました。

純正EQはかなり軽い

一方でFairlight Live純正のEQは体感でも明らかに軽い。ライブ用途では「基本的なEQは純正、特殊な処理だけVST」という使い分けが現実的だと思います。


リバーブは意外と耐えた

ボーカルへVSTリバーブをインサートして、さらに各chにも追加してみました。本来ライブならAUXバスにまとめるのが定石ですが、今回はあえて高負荷を作るために各chに個別インサートしています。

結果、CPU使用率は20%前後まで上がったものの、すぐに破綻する感じではありませんでした。空間系は意外と耐えてくれます。


レイテンシーを実マイクで確認

バッファサイズを512にしたまま、スピーカーからマイクで音を返す形で、実際のレイテンシーも測定しました。

結果は約10ms前後。FOH用途ならギリギリ許容範囲ですが、モニター用途では演者によっては気になるレベルかもしれません。

ひとつ注意が必要なのは、プラグインの内部遅延です。Fairlight Liveは1つのトラックに重いプラグインを挿すと、そのトラックだけでなく全体のレイテンシーが増える挙動があります。

VSTホストのLive Professorとは違う点なので、プラグイン選びの段階から意識しておく必要がありそうです。


モニターミックスは現状の大きな壁

ライブ用途で一番引っかかったのがここです。現状のFairlight LiveにはSENDS ON FADERがありません。ライブミキサーのように直感的にモニターを調整する操作感は、今のところ実現できていません。

2026/06 追記

Fairlight Live 1 Beta 3に「フェーダークリップ機能」が追加されました!

これにより、モニター別ミックスが容易になりました。


ノイズリダクション系VSTはかなり重い

最後に本命の高負荷検証として、Clear系のノイズリダクションプラグインを入れてみました。

これが重かった。CPU使用率の数字上はまだ余裕があるように見えても、ドロップアウト・ノイズ・動作の不安定化が急に増えました。平均負荷と瞬間負荷のギャップが大きいタイプのプラグインで、数字だけでは判断できない典型例です。


フェイルセーフ機能について

Fairlight Liveにはフェイルセーフ機能が搭載されていますが、これは「音切れを防ぐ機能」ではありません。ソフトクラッシュ・PC停止・電源断といったシステム障害に対するものです。

ドロップアウト・過負荷・レイテンシー増加については、フェイルセーフは効きません。この点は誤解しやすいので注意が必要です。


個人的な感想

今回の検証を通じて、リアルタイムオーディオならではの難しさを改めて実感しました。

特に印象的だったのは、「CPU使用率が低くてもドロップアウトは起きる」という事実です。M1 MacBook Proでの検証中、アクティビティモニタ上のCPU負荷にはまだ余裕があるにもかかわらず、音切れやノイズが発生する場面がありました。これは、オーディオ処理が「平均的な計算量」ではなく、バッファサイズという極めて短い「締め切り時間」内に処理を終えられるかという、瞬間的なピーク性能に左右されるためです。

一瞬の負荷スパイクや特定のコアへの処理集中、あるいはOS背後でのバックグラウンド処理……。これらが重なると、数字上の余裕とは裏腹にリアルタイム処理が破綻してしまいます。

一方で、専用のDSPサーバー(SoundGrid Server)である「Titan-R」などがなぜ信頼されるのか、その理由もここに見えました。 中身が同じ汎用CPU(Core i9等)ベースであっても、汎用OS(macOS/Windows)上で動かすのとはワケが違います。SoundGridサーバーは、オーディオ処理のためだけに徹底的にカスタマイズされた軽量な専用OSで動作しており、GUI描画やネットワークの割り込みといった「音楽に関係のないノイズ」を排除して、全パワーをリアルタイム処理に全振りしています。この「徹底的な最適化」こそが、低バッファ時でもスパイクを起こさない圧倒的な安定感の正体です。


現時点での結論

正直な感想を一言でまとめると、「VSTエフェクトが魅力だがハードル」です。

VST活用の自由さ、ソフトウェアベースの柔軟なルーティング、放送とライブの融合という方向性はかなり面白い。ただ、VSTを使いたいだけならハードウェアミキサー+SuperRack Performerという選択肢もあって、現時点での安心感はそちらのほうが高いです。

一方で、オーディオ処理が専用チップ(旧来のDSP)から汎用CPUベースのシステムへ移行していく流れ自体は確実に進んでいます。

PC性能の向上や、SuperRack Performerのようなネイティブ環境の最適化が進めば、「わざわざ外付けサーバー(DSPサーバー)を持たなくても、現場のPC一台で完結する」という時代がすぐそこまで来ていると感じます。

今後も、オーディオインターフェイスの変更・DSPサーバー連携・CPUネイティブ環境の進化あたりを検証しながら、「ソフトミキシングが現場で快適に使える環境」を引き続き追っていきたいと思います。


動画版はこちら

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